はじめに



CCNA(Cisco Certified Network Associate)は、大手ネットワーク機器メーカーであるCisco(シスコシステムズ社)によるネットワーク技術者認定資格です。

ネットワークエンジニアが保有すると有利といわれるCCNAですが、取得すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

また、CCNA試験の難易度や合格率、効率的な学習方法等についてもまとめました。


CCNAを取得するメリット

まずはCCNA資格を取得することでどんな恩恵があるのか、見てみましょう。


世界標準の専門スキルを証明



Cisco社はルーターやスイッチングハブ等のネットワーク機器業界において巨大なシェアを誇ります。

そのため、Cisco社の認定資格を持つということは、世界中の様々なシステムで導入されているこれらの機器を正しく有効に活用できることの証明となるのです。

ネットワークエンジニアとしてまさに世界標準の専門スキルを持つことをアピールでき、自身の市場価値を高めることができます。


ネットワーク技術者に必要な知識の獲得



実際にCCNA資格を取得するには、ネットワーキング技術に関する様々な体系的知識の吸収が必要です。

資格取得の目的はスキルの証明や人材価値の向上であるにせよ、そこに到る道のりでは必ずネットワークエンジニアに必要な知識を獲得することができます。

システム系の企業では新人研修の一環として受験をカリキュラムに組み込んでいるケースもある程です。


給与水準のUP



先述の通り、CCNAを取得すれば、ネットワークエンジニアとして一定のスキルを持つことを証明できます。

資格を持たない人材とは一線を画し、組織にとってより優れたパフォーマンスを発揮できることをアピールできるのです。

また実際に専門知識を活用して大きな成果を残したり、組織に貢献できる場面が増え、給与水準が上がる傾向にあります。

実際に米国では、CCNA取得者の給与が取得前と比較し上昇していることがデータにより裏付けられ、資格保有が給与UPに優位となることが証明されました。


自身のスキルチェック



後述しますが、CCNAの出題内容は広範囲にわたります。

一人前のネットワークエンジニアであるかどうかの力量を試すといわれるCCNA資格を受けてみれば、自身のスキルレベルを確認することが可能です。

どの範囲が苦手で、実力不足なのかを明確にして、次のスキルアップ計画を練るヒントにするのも良いでしょう。


CCNAのグレードとカテゴリー

Cisco社の認定試験はCCNAだけではありません。ネットワーキング技術に関する資格が他にも多くあり、難易度と試験内容により分類されています。


難易度によるグレード



入門レベルの「エントリー」クラスから、最上級の「アーキテクト」まである中で、CCNAは下から二番目の「アソシエイト」レベルに属します。

このレベルは最も知名度が高いため履歴書に書けばすぐ伝わり、受験対策本も多く、いろんな意味でバランスの取れた資格といえるでしょう。


試験内容のカテゴリー



さらに、Cisco認定試験は、出題内容によりいくつかの分野にカテゴリー分けされています。主なカテゴリーは下記の通りです。

  • アーキテクト
  • クラウド
  • コラボレーション
  • サイバーセキュリティオペレーション
  • データセンター
  • デザイン
  • インダストリアル
  • ルーティング & スイッチング
  • セキュリティ
  • サービスプロバイダー
  • ワイヤレス

従来のCCNAはこのうち「ルーティング & スイッチング」や「サイバーセキュリティオペレーション」等、いくつかの分野ごとに制定されていました。

正式名称は「CCNA Routing & Switching」や「CCNA Cyber Ops」といい、最もポピュラーなのが前者となっています。

ただし2020年以降はこれら複数の分野に分かれていたCCNAが一本化され、「200-301 CCNA」に統合となります。


CCNAの難易度・合格率

下から2つ目のグレードであること、新人研修にも組み込まれることから、CCNAは意外と簡単に取得できるのでは?と思われたかもしれません。

しかしCCNAは受験者の増加に伴い何回かのバージョンアップを繰り返しており、v3(バージョン3)では難易度がかなり上がりました。

現状では、日々どれだけの学習時間を確保できるかにもよりますが、取得までに数ヶ月〜1年以上かかるケースも多いです。

さらに先述の通り、新CCNAでは複数分野が統合されるため試験範囲も広くなりさらに難易度が上がっていくと見込まれています。


CCENTとの違い



過去、CCNAの難易度上昇に伴い制定された認定資格がCCENT(Cisco Certified Entry Networking Technician)です。

文字通り、CCNAの一歩手前のエントリークラスに位置付けられる資格となっています。

当初はCCENTから始めてCCNA、さらにその上のCCNP(Cisco Certified Network Professional)とスキルアップしていくことを想定されていました。

しかし、CCENTはCCNAの受験にさしあたり必ずしも保有が必須条件ではないこと等から、新CCNAの制定に伴い廃止となります。


合格率は?



例年数万人が受験するといわれるCCNA試験。合格率は正式には発表されていないものの、以前は大方60%といわれていました。

ただし難易度が上昇し続けていることから、合格率は例年下がっていると見立てられています。

出題範囲の拡大や試験レベルのアップについては、今後もこの傾向が続くと見込まれるため、受験するならば早いうちが良いでしょう。


CCNAの試験内容

実際の試験はどのように行われるのでしょうか。現状、CCNAには選択問題記述問題があります。


CBTによる選択問題



選択問題は、クリックやドラッグ&ドロップを活用するCBT(Computer Based Testing)形式です。

出題範囲は従来の「CCNA Routing & Switching」から拡大され、主に下記の分野から出題されます。

  • ネットワークの基礎
  • LANスイッチングテクノロジー
  • セキュリティの基礎
  • IPv4およびIPv6ルーティングテクノロジー
  • WANテクノロジー
  • インフラストラクチャサービス
  • インフラストラクチャセキュリティ
  • インフラストラクチャの管理
  • 自動化とプログラマビリティ


シミュレーション問題



キーボードを使う記述式問題も出題されます。実機の設定をシミュレートし回答するため、シミュレーション問題とも呼ばれるものです。

具体的には、サブネットの計算や状況に応じた適切なコマンドの入力、設問を満たすためのコンフィグ入力等が出題されます。

日々の業務で実際に機器を操作していることを想定して出題されているので、まだ実機を触ったことがない場合には難関ですね。

後述する方法でしっかりと対策しましょう。


CCNAの勉強方法

ここからは、CCNA試験に合格するためにおすすめの勉強方法を見ていきましょう。


公式サイトでの試験問題演習



まずはどのような問題が出題されるのかを確認し、実際に解いてみましょう。

試験の名称やリンク先は高頻度で変更されるため、受験時期に合わせて公式サイトで最新情報を取得することをおすすめします。

出題範囲の確認も重要です。苦手な範囲がわかったら、そこに集中して知識を入れ込みましょう。


学習サイトでのトレーニング



公式サイト以外にも、有償無償問わず様々なCCNA学習サイトがあります。用途や予算に合わせて自分に合ったサイトを使ってみましょう。

  • Ping-t:様々なIT資格対策を集めたサイトです。ユーザ登録により一部無料で対策問題集を使用できます。
  • 9tut.com:英語のみですが、CCNAに特化した問題集を無料で使用可能です。
  • CramMedia:CCNAをはじめとし、有料ですが短期集中で対策できる良質なコンテンツが揃っています。


シミュレーション問題対策



記述問題はどのように対策すべきでしょうか。

これについては、やはり本物のルーター機器を使って学習するのが一番有効です。実務で使用しているならばこれ以上の学習機会はありません。

残念ながら使用するチャンスがない時は、対策予算に余裕があれば自費で買って使ってみるのが良いでしょう。

それも難しい場合は、まずGNS3を使ってみるのがおすすめです。

GNS3はCiscoルータのエミュレータである「Dynamips」を使ったソフトウェアで、仮想デバイスで構成するネットワークのシミュレーションができます。

ACLEIGRPといった主要なプロトコル設定を一通り把握しておくのが良いでしょう。


CCNA合格のためのおすすめ本①

1週間で CCNAの基礎が学べる本 第2版 (徹底攻略)

実務経験が全くない方や、始めて間もない方におすすめの入門本です。

いきなり公式サイトや学習サイトで問題集を解き始めても、背景知識がないと噛み砕くのにも一苦労ですね。

この本はCCNAのそんな受験対策を始める一歩前に必要な背景知識を身につけるのに大変役立ちます。

題名の通り1週間で読み切れるよう、1日目・2日目…といった目次構成になっており、短期間で段階的に知識レベルを上げていくことが可能です。

Ciscoの機器に特化した内容は最終日の7日目のみで、他はネットワーク関連の基礎知識になっています。

そのため、CCNAを受験するかどうか迷っている段階で手に取ってみるのもおすすめです。

「まずはネットワークについて基本的なことを知りたい、興味が持てればCCNAの試験も受けてみたい」といったニーズにも応える一冊といえるでしょう。


CCNA合格のためのおすすめ本②

シスコ技術者認定教科書 CCNA Routing and Switching ICND2編 v3.0 テキスト&問題集

実は以前のCCNA取得条件は2パターンあり、CCNA試験に合格するか、ICND1ICND2という2つの試験に合格するかのいずれかでした。

CCNAの内容はICND1とICND2の両方を網羅しているため、対策本はこのようにICND1とICND2に分かれて出版されていることが多いです。

実際にCCNA試験だけを受験するつもりでも、より詳細に解説されているICND1とICNC2の対策本を両方やってみると良いでしょう。

この本はICND2向けの対策本ですが、参考書と問題集が1冊にまとまっていてわかりやすく、特に人気があります。


CCNA合格のためのおすすめ本③

(スマホ問題集付)徹底攻略Cisco CCENT/CCNA Routing&Switching問題集 ICND1編[100-105J][200-125J]V3.0対応

こちらはCCNA試験範囲のうち、ICND1の内容に特化した問題集です。

問題1つ1つに対しての解説が丁寧でわかりやすいことに定評があり、問題集としては最も人気があります。

ある程度の実務経験は積んでおり、参考書を読んで学習している時間はないが手っ取り早く対策を始めたいという方にもおすすめです。

また、一通り他の参考書や学習サイトで知識を身に付けたので、受験前の最終仕上げとして模擬試験的に使うのも良いでしょう。


CCNA合格のためのおすすめ本④

短期集中! CCNA Routing and Switching/CCENT教本

記述形式であるシミュレーション問題の対策にうってつけの一冊です。

ウェブブラウザで動くネットワークシミュレーターが付録として付いているので、実際にコマンドを打って挙動を確認できます。

実機を触る機会がない場合や、1つ1つのコマンドは知っていてもそれがネットワークにどう影響するのか、全体イメージを掴みたい場合におすすめです。

価格も手頃なので、実機を買って動かしてみるよりも気軽に始められます。

各ケースにおいて丁寧な図解解説があり、初心者でも簡単に理解できると高評価です。


まとめ

サーバールームで作業をするエンジニア


ネットワークエンジニアが取得するのにおすすめの資格、CCNAについてメリットや学習方法を説明しました。

保有していればキャリアアップに有効なのは間違いなしですが、試験内容や対策ページを見てみるだけでも実務ですぐに役立つ知識が得られそうですね。

試験の概要や名称は都度アップデートされるため、最新情報についてはCisco社の公式ページをご確認ください。