フリーランスとして働く場合の税金や控除について、抑えておくべきポイントを交えながら解説!
会社員からフリーランスとして独立し、これから自身がやりたい仕事や、キャリアアップにつながる仕事をしたいと考えている方は多いと思います。
しかしながら、フリーランスになると、これまで会社が対応してくれていた税金や控除に関する手続きを自分でこなす必要が出てきます。
では、フリーランスになると具体的にはどのような税金を支払うことになるのでしょうか。
所得控除は、上手く活用することができれば節税につながり、結果として手元に残る所得も増え時間の余裕も生まれる、フリーランスにとって非常に重要な制度です。
監修:ベックワンパートナーズ総合事務所
消費税の納税義務が免除される事業者とは
まず、消費税には納税義務が免除される事業者(免税事業者)の制度があります。
フリーランスになったからといって、すぐさま全員に消費税の納付義務が発生するかというと、そういうわけではありません。
前々年の売り上げが1,000万円を超えない場合には免税事業者となり、消費税の納税が免除されるのです。
たとえば、個人事業主の場合、2023年の消費税の納税義務は2021年の課税売上高が1,000万円を超えている場合に発生します。
つまり、免税事業者になるかどうかは、基準期間の課税売上高により判定されるのです。
ただし基準期間(この場合2021年)の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば納税免除になりませんので注意が必要です。
個人事業主の場合、特定期間とはその年の前年の1月1日から6月30日までの6カ月間(この場合2022年1月1日から6月30日まで)を指します。
また新規開業から2年間は基準期間の課税売上高がないため、原則としてその課税期間の納税義務は免除されます。
なお参考までに、フリーランスではなく法人となると、「資本金が1,000万円以上の場合」は納税義務は免除されませんので注意しましょう。
消費税の免税事業者でも消費税は請求できる
免税事業者は消費税の納税を免除されているので、発注元に対しても消費税を請求できないと思われるかもしれません。
しかし免税事業者であっても消費税を請求することが可能です。
消費税法第4条において、「国内において、事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課する」ことが法律で決まっています。
「消費税を課する」=「消費税を請求する」ことです。この規定は免税事業者にも適用されます。
消費税を上乗せして請求することで、自分が仕入れの際に払った消費税を自己負担することのないようにしましょう。
インボイス制度の導入により対策が必要に
消費税10%への引き上げにともない、2023年10月1日よりインボイス制度が導入されることが決まりました(正式名称は適格請求書等保存方式)。
インボイス制度は、インボイス(invoice)と呼ばれる帳簿と請求書等を保存する制度で、これが仕入れにおける税額控除の要件になります。
インボイス制度では適格請求書発行事業者以外からの仕入れには仕入税額控除が適用されません。
フリーランスなどの免税事業者は適格請求書を発行できないので、取引先で仕入税額控除ができなくなってしまいます。
そのため、フリーランスは2023年10月1日までに課税事業者になるなどの対策が必要になります。
インボイス制度は、フリーランスにとって極めて大きな影響を与える制度として話題になっていますが、まだインボイス制度についての判断や対応をしていないという方は、こちらの記事も併せてご参照ください。
インボイス制度の概要と、免税事業者の個人事業主やフリーランスへの影響と対策についてわかりやすく解説
フリーランスとして活躍するために税制をしっかりおさえておく
フリーランスになると、納税関連の業務も自分自身で対応することになるため、税制についてきちんと理解しておくことが重要です。
フリーランスに関係のある税金や社会保険料には、消費税のほか所得税・住民税・医療保険料・介護保険料・年金保険料などがあります。
また、事業所得が290万円を超える事業者には事業税がかかるなど、多くの税金や社会保険料が関わってきます。
それぞれの税金や社会保険料についてみていきましょう。
所得税
所得税は個人の所得に対してかかる税金で、1年間のすべての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。
所得が多くなるほど税率が高くなりますが、控除が大きくなれば課税の対象となる所得が少なくなり、所得税を低く抑えることにもつながりますので覚えておくようにしましょう。
住民税
住民税は、道府県民税と市町村民税を合わせたもので、市区町村が一括して徴収します。
地方自治体による教育や福祉・ゴミ処理・公共施設の運営などの行政サービスにあてられる税金です。
所得に応じて計算される所得割と、各市町村によって異なる額を一律に課される均等割を合算した額となります。
健康保険料、介護保険料
医療保険はフリーランスになるとそれまで加入していた健康保険から、国民健康保険または国民健康保険組合へと切り替えることになります。
自営業者や退職者などが加入している国民健康保険は都道府県が運営しています。
名前がよく似ていますが、業界の組合が運営する国民健康保険組合は月額固定制です。
また任意継続という会社員時代に加入していた健康保険に2年間だけ継続して加入できる制度があります。
年金
フリーランスになると、厚生年金から国民年金に切り替えることになります。
公的年金は二階建ての構造になっており、一階部分は国民年金、その上に二階部分の厚生年金が上乗せされる形になります。
国民年金の保険料は物価や賃金の伸びなどに合わせた定額制で、2023年度(2023年4月~2024年3月)は月額16,520円ですが、まとめて前払いすると割引が適用されます。
参照:国民年金機構
20〜60歳まで全期間保険料を納めた場合、65歳からの年金支給額は国民年金で月額66,250円です。厚生年金は加入期間によって計算式が変わるため、詳細は以下をご確認ください。
月額66,250円の国民年金だけでは十分とはいえませんので、小規模企業共済やiDeCO(個人型確定拠出年金)を検討するとよいでしょう。
小規模企業共済は小規模企業の経営者などを対象とし、掛け金を500円単位で1,000円から70,000円まで自由に設定することができ、65歳時や廃業の際に積立金に応じた共済金を受け取ることができます。
iDeCO(個人型確定拠出年金)は掛け金や運用方法を自分自身で決める制度で、掛け金は月5,000円以上から1,000円単位で決めることができます。
フリーランスが1年に支払う税金は結局いくら?
上記で紹介した各種税金やその計算方法からもわかる通り、フリーランスが1年の間に支払う税金の額は前年の所得や所得控除によって大きく変わります。
したがって、こちらではいくつかの税金の支払い額の例をご紹介します。
【年収500万円、年間の経費に50万円かかった場合のおおまかな税金支払額】
- 白色申告の場合:1,223,000円
- 青色申告の場合:966,000円
【年収800万円、年間の経費に100万円かかった場合のおおまかな税金支払額】
- 白色申告の場合:2,216,000円
- 青色申告の場合:1,958,000円
もちろん、上記の額はあくまでも一例なので、全ての人に当てはまるわけではありません。
ただし、白色申告よりも青色申告の方が確実に節税できるということは間違いないでしょう。
白色申告と青色申告の違いは下記をご参考ください。
フリーランスはどのタイミングで税金を支払えばよいのか
フリーランスが支払う主な税金は、所得税・住民税・健康保険料(介護保険料)・年金の4つです。
それぞれの税金の支払時期について、おおまかではありますがまとめました。
- 所得税:翌年3月15日までに支払う(口座振替の場合は4月中旬~下旬)
- 住民税:6月・8月・10月・1月の4回に分けて1年分を支払う
- 健康保険料(介護保険料):6月~翌年3月にかけて10回に分けて1年分を支払う
- 年金:毎月
それぞれの支払いのタイミングをすべて記憶し対応するのは煩雑なため、口座振替で支払うことをおすすめします。
確定申告と電子申告の説明
その年に得た所得に応じて納める税金の金額を決めるための手続きが確定申告です。
1月1日から12月31日までに得たすべての所得の金額を計算して、それに対する所得税を計算します
2023年は2月16日から3月15日までの確定申告期間内に、その地域に住所等のある地域を管轄とする税務署に提出します。
確定申告を行うことによって納めすぎた税金が還付金として戻ってくることもあります。
毎年、確定申告時期の税務署は大勢の人で大変な混雑となり、都心部の大きな会場に出張所などが設けられることもあります。
時間も労力もとられるため、インターネット上から申告することができる電子申告(e-Tax)が便利です。
今後の確定申告は、ますますe-Taxが増えると予想されます。
e-Taxを使用するために必要な利用者識別番号はマイナンバーカードを利用して取得することもできます。詳細は下記をご参照ください。
覚えておくべき所得控除の種類
続いては、フリーランスとして覚えておくべき所得控除についてご紹介します。
控除によって所得税を減らすことができるため、控除についての理解を深めることで節税につなげることができます。
所得控除は10種類ほどあります。主な控除についてみていきましょう。
基礎控除
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額に応じて以下のように決まります。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
出典:国税庁 基礎控除
青色申告特別控除
青色申告を行った人が対象となります。
控除の適用のための申請と承認を受けた場合、簡易簿記・現金式簡易簿記の場合は10万円、複式簿記の場合には65万円が控除されます。
医療費控除
納税者本人または納税者と生計を同じくする配偶者やそのほかの親族のために医療費を支払った場合に受けることができます。
控除額は、支払った医療費の合計額-支給された保険金(入院費給付金・高額療養費・出産育児一時金など)など-10万円(総所得金が200万円未満の場合は総所得の5%)となります。
社会保険料控除
納税者本人、または納税者本人と生計を同じくする配偶者、そのほかの親族の社会保険料(健康保険や国民年金、厚生年金保険)を支払ったときに受けることができます。
控除額はその年に支払った国民健康保険、国民年金などの金額となります。
小規模企業共済等掛金控除
納税者が小規模企業共済法が規定する共済契約に基づく掛け金などを払った場合に受けられます。
控除額はその年に支払った掛金の全額になりますので、月70,000円を掛け金にした場合、70,000円×12カ月=840,000円を所得から減額することができます。
生命保険料控除
納税者本人が生命保険料や介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合に一定の金額の所得控除を受けることができるもので、控除額は最大で12万円となります。
配偶者控除
納税者本人に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、5つの要件を満たすことで最大38万円の控除を受けることができます。
- 民法の規定による配偶者である
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
- 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1,000万円以下
なお、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人の場合は最大48万円の控除を受けることができます。
また内縁関係の人は上記の条件を満たしていたとしても該当しないため注意しましょう。
扶養控除
納税者本人に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に、4つの要件を満たすことで最大63万円の控除を受けることができます。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族、または3親等内の姻族)、都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でない
なお、扶養親族の年齢・同居の有無などによって細かく規定があり控除金額が変わるため、詳しい額について知りたい場合は市役所および税務署に問い合わせることをおすすめします。
地震保険料控除
納税者本人が地震や津波で損害を被った場合に備えた地震保険の保険料を支払った場合に、最大5万円の控除を受けることができます。
寄付金控除
納税者本人が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して「特定寄附金」を支出した場合に所得控除を受けることができます。
ふるさと納税は寄付金控除のひとつです。
控除額は「その年に支出した特定寄附金の額の合計額」か「その年の課税標準額(所得控除額を差し引いた後の金額)の40%相当額」の2つのうち低い金額-2,000円となります。
そのほかに雑損控除・寡婦(寡夫)控除・勤労学生控除・障害者控除があります。
また日本国内に住所などがない非居住者の場合の所得控除は基礎控除・寄附金控除・雑損控除のみとなります。
まとめ
本記事では、フリーランスとして知っておくべき税金や控除の知識について、包括的にご紹介をいたしました。
フリーランスに関係のある税金や社会保険料には、消費税のほか所得税・住民税・医療保険料・介護保険料・年金保険料と多くの種類があり、また所得控除も10種類にも及びます。
このように、種類が多いうえにそれぞれにルールなどが設けられており、すべてを理解することは簡単ではありません。
しかし、税金について正しい知識を持っておくと、さまざまな面でフリーランスとしてプラスに働くでしょう。