IT業界で働く上で資格は非常に重要

情報処理

IT業界・エンジニアとして仕事をしていく上で大きな武器になるのが資格

IT系関連資格は数多くの団体から非常に幅広い種類が実施されており、知名度の高い資格もあれば、低いものまで。

就職・転職をする際に「自分の持っているスキル・知識」を手っ取り早く、かつはっきりと証明できるのが「資格」なのです。


フリーランスで仕事をする上で資格は強力な武器になる

ラップトップコンピュータで仕事をするビジネスマン

特にフリーランスは即戦力級のスキルを求められるケースが多い傾向にあります。

採用側にとっても、エンジニアという人材を探す上で応募者が所持している資格を見れば「どの程度のスキルレベルにあるのか」を即座に判別できます。

「この人は自分たちの求めるスキルや知識を持っているか」を判別できるので、条件にマッチする資格を持っていれば他の応募者たちよりも書類上・データ上等の段階で1歩リードできるのです。

もちろん資格によってその強さは異なりますが、仕事を探す過程における「強力な武器」になるでしょう。


トップクラスの知名度を持つ基本情報技術者試験

プログラムのコード

数あるIT関連資格ですが、その中でも非常に有名なのが「基本情報技術者試験」。

IT業界ではもちろん、一般的な認知度も非常に高い資格試験です。

「FE」と呼ばれることもある基本情報技術者試験は、IT系資格の中で最も知名度が高いと称しても過言ではありません。

国家試験という肩書のある当試験は、IT全般に関して幅広い範囲から問題が出題される試験です。

午前試験・午後試験の2部門に分かれ、それぞれ出題傾向・形式も異なっているという特徴も。

今回はこちらの記事で、そんな基本情報技術者試験の「メリット」に注目してみましょう。

出題範囲や試験の難易度などに加え、勉強の仕方についても併せて紹介していきます。


基本情報技術者試験で求められるIT知識のレベル

時は金なり

まずは、基本情報技術者で実際に求められるIT知識のレベルをチェックしてみましょう。

基本情報技術者試験はIPAが実施している「情報処理技術者試験制度」においてスキルレベル2に区分されています。

レベル1:ITパスポート

レベル2:基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験

レベル3:応用情報技術者試験

レベル4:高度情報処理技術者試験(システムアーキテクト試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験等々)

出典元:https://ja.wikipedia.org/wiki/情報処理技術者試験

他の国家試験たちと比較して見てみるとさほどレベルの高い試験ではないということが分かります。

しかし、基本情報は「登竜門」と称されることもある通りIT業界で働く上で必要となる知識などが幅広く出題される試験です。

では、ここからは実際にどの程度のIT知識が必要なのかを紹介します。

午前・午後それぞれで出題範囲や必須問題が異なっているので、別々にチェックしていきましょう。

なお、基本情報技術者試験は午前試験・午後試験共に60%以上の正解で合格となります。


午前試験

まずは午前試験。

午前試験は全80問で、全て4択問題で出題されます。

試験時間は9:30~12:00に実施され、150分…つまり2時間30分かけて行われるという、長丁場な試験です。

試験範囲は以下の通りです。

  • 基礎理論
  • コンピュータシステム
  • 技術要素
  • 開発技術
  • プロジェクトマネジメント
  • サービスマネジメント
  • システム戦略
  • 経営戦略
  • 企業と法務

出典元:https://ja.wikipedia.org/wiki/基本情報技術者試験

大分野では上記9つですが、細分化した中分類では23分野にも及ぶ多方面への知識が問われます。

また、試験範囲を眺めてみると分かる通り「マネジメント」や「経営戦略」、「企業と法務」といった一見ITとは無関係とも思えるものまで出題

これらの分野で実際に出題される問題もITというよりもビジネス寄りの問題が多い傾向にあります。

そのため、仮にITの知識を十二分に持っていたとしても「ビジネス系の部分で点が稼げなくて不合格」なんて事態も容易に起こり得ます。

こう見ると、基本情報技術者試験が本当に幅広い分野をカバーしていることがよく分かりますね。

余談ですが、80問の4択問題なので、全て適当に解答したと仮定しても25%は正当するという期待値が計算できます。


午後試験

続いて、午後試験の試験範囲をチェックしましょう。

試験時間は13:00~15:30と設定されており、午前同様150分以内に解く必要があります。

午後試験は必須問題と選択できる問題があるのが大きな特徴。

以下の中から大問が11問出題されるので、まずは試験範囲をご覧ください。

  • 情報セキュリティ
  • ソフトウェア・ハードウェア
  • データベース
  • ネットワーク
  • ソフトウェア設計
  • プロジェクトマネジメント
  • サービスマネジメント
  • システム戦略
  • 経営戦略・企業と法務
  • データ構造及びアルゴリズム
  • ソフトウェア開発

出典元:https://ja.wikipedia.org/wiki/基本情報技術者試験

上記大問の中で、毎試験問1に設定される「情報セキュリティ」、問6に設定される「データ構造及びアルゴリズム」必須問題とされています。

また、問7〜11は「ソフトウェア開発」と銘打った「プログラム言語問題」です。

「C・Java・Python・アセンブラ(CASL II)・表計算」の中からいずれか1問を選択する必要があります。

午前試験同様、ビジネス系に寄った問題である「マネジメント系」や経営戦略といった「ストラテジ系」なども出題。

午前・午後共にITに関する幅広い知識に加えて、ビジネス系の知識もある程度必要となります。


合格に必要なIT知識のレベル


出題範囲や傾向をざっくりとチェックしてみましたが、実際に合格するために必要なIT知識のレベルはどれほどのものなのでしょうか。

基本となる「2進数・10進数・16進数」を相互変換できることなどはもちろん、カタカナ・アルファベットで構成される数多くのIT用語を頭に叩き込んでおく必要もあります。

しかし、あくまでIT業界で働く上で「基本」レベル程度のことしか出題されません。

裏を返せば、IT業界の現場で働いていた経験が数年ある方は、もう既に合格するために必要な知識の大半が頭に刻み込まれている可能性すらあります。

それでも価値を認められているのは「国家試験」であることと「基本的な知識」が「幅広く」出題されているから。

言い方を変えれば「広く、浅く」といった具合の試験といえます。

広範囲の知識をカバーできていることや「IT業界で働く上で必須レベルの知識は備えている」ことが分かるため、価値を認められているのです。


基本情報技術者試験の難易度

ノートを取る学生た

そんな基本情報技術者試験ですが、続いては「難易度」という観点から注目してみましょう。

冒頭で少しだけ触れた通り、基本情報技術者試験はIT系資格のレベルは4段階中の「2」

これだけ聞くと「そんなに難しくない試験なのかな?」と感じるかもしれません。

そこで「合格率」をチェックしてみましょう。


合格率は高くない

基本情報技術者試験の合格率は、多少の差異はありますが例年「20%前後」です。

これを聞いて低いと感じるか、高いと感じるかは人それぞれですが、1段階レベルの低い「ITパスポート」の合格率は例年「約47%」。

レベル差は1だけですが、難易度の差はそれ以上であるということがよく分かるデータです。

そもそも、基本情報技術者試験の受験者は「ITパスポートに合格できる程度の知識を持っている人たち」も多いため、Iパス程度の知識では合格は難しいということが分かります。


午前で諦める人もいる

実際に試験を受けてみると、午前試験と比べて午後試験の方が試験会場に人が少ないことに気が付くかもしれません。

一体どういうことでしょうか。

これは、午前試験を受験したもののあまりの出来なさに諦め、午後は受験せずに帰宅してしまう人もいるということです。

実際に「午前試験のみ」の合格率を見てみると「40〜55%程度」だとされています。

約半数〜それ以上の人が午前試験不合格という現実があるのです。

いくら「基本的な知識を問われる試験」とはいえど「生半可な気持ちでは合格できない試験」だということが分かります。


勉強時間の目安

古い懐中時計

では午前試験と午後試験、それぞれの勉強方法などを解説いたします。

「基本」とはいえ、やはり勉強は必須な試験。

事前知識の有無によっても必要勉強時間目安は変わってきます。


事前知識のない人の場合

一般的に、基本情報技術者試験を合格する勉強時間の目安は「200時間前後」とされています。

ただし、これは事前知識のない人の勉強時間。

事前知識がなければ非常に広範囲から出題される基本情報は難敵でしょう。

専門用語も数多く問題に出てきて「問題文の意味が分からない」という事態に陥るかもしれません。

そのため、問題とはあまり関係のない部分に勉強時間を割く必要も生じてきます。


事前知識がある人の場合

既にIT知識を備えている場合や、現場で働いていた経験を持っている方であれば200時間も勉強時間を確保する必要はありません。

特に「プログラミング」知識のある方、更に言えば基本情報に出題される「C・Java・Python・表計算」を扱える場合は勉強時間がグッと縮まります(CASL IIは一般的に用いられない言語なので除く)。

事前知識がある場合は、必死に勉強せずとも十分に合格できる可能性があります。

目安となる時間は知識の程度によって異なりますが、現役でIT業界で働いていて「100時間必要」という方がいれば「20〜50時間でいけた」という方もいらっしゃいます。

どちらにせよ、事前知識のない人に比べれば半分程度の勉強時間で十分に合格が可能です。

ただし、記事内でも何度か触れている「マネジメント・ストラテジ系」については力を入れた勉強が必要になるかもしれません。


午前試験の特徴と勉強法

自分たちのオフィスで働く男性

では実際に午前・午後とそれぞれ勉強という観点からチェックしていきましょう。

既に紹介した通り、午前試験は合計80問が出題され、合格ラインは60%。

つまり、80問中48問正解すれば午前試験はクリアということになります。

午後試験と比較すると問題の難易度も低いため、ITに関する事前知識を持っている方はさほど比重を置いて勉強する必要はないでしょう。

そして、午後試験の勉強をすれば必然的に午前試験の問題も解けるようになるケースも多いです。

あくまで午前試験は過去問などをチェックする「振り返り程度」に留めておくと良いでしょう。

ただし事前知識が無い方、IT分野は初挑戦という方はこうはいきません。

参考書などで基礎理論などをしっかりと読み込んで、頭に叩き込む必要が生じてきます。

また、基本情報技術者試験の午前試験の大きな特徴として、「過去問が繰り返し出題される」というポイントがあります。

これは「過去に出題された問題と一言一句違わず全く同じ問題(選択肢も)が出題される」という意味です。

つまり、極端に考えれば「ひたすら過去問に取り組んで解答を覚えてしまう」ことでクリアできてしまうのです。

解答は選択肢まで変わらないため、過去問を繰り返している内に問題文の一文目を読んだだけで解答が分かってしまうようになるかもしれません。

解答を覚えておくと、計算問題で計算する必要すらなくなります。

ただし、知識の定着とは程遠いので「合格のための最終手段」という認識にしておきましょう。


午後試験はタフな試験

さて、力を入れて勉強したいのはやはり午後試験。

合格ラインは午前同様「60%」です。

午前試験は4択問題ですが、午後試験はそれ以上の選択肢が用意され、更には問題そのものの長文を読解する必要があります。

いきなり過去問を解いても理解できないため、参考書など解説をしっかりと読み込むという、一見地味な勉強が必要です。

勉強をする際にも、試験当日も長い文章を読むことになる「頭をフル回転させる」試験だといえます。


午後試験で非常に重要な3問

可視化されたネットワーク

午後試験の出題範囲については先ほど触れましたが、中には3問、特に比重が高い問題があります。

それは「セキュリティ」と「データ構造及びアルゴリズム」と「プログラム言語問題」です。

特に後者2つは最も配点が高く設定されています。

全問正解した場合「セキュリティ」は20点、「データ構造及びアルゴリズム」と「プログラム言語問題」は各25点と非常に高く配点されているのです。

これら3問以外の配点は15点となっており、選択できるのはその中から2問だけ。

つまり、3問で午後試験の「70点」もの配点を占めているのです。

それだけ重要な問題たちであることが分かります。

特にこの3問に比重を置いて勉強することで、合格をグッと手繰り寄せることができるでしょう。


プログラム言語問題について

プログラミングコンセプト

午後試験では、プログラム言語が5種類用意されています。

それぞれの特徴を簡単に紹介していくので、参考程度にご覧ください。


C・Java・Python

メジャーな言語であり、実際の現場でも触れる機会の多いのがこちらの3言語。

中でもPythonは2020年からの追加言語であり、需要の高まりに合わせての改正となります。

知識ゼロから勉強すると苦戦を強いることになるかもしれませんが、経験者視点だと問題自体そこまで難易度は高くありません。

そのため、これらの言語に関して基礎的な考え方や言語知識を備えていれば、簡単に点数を稼ぐことが可能です。

実務で使ったことのある言語・使いこなせる言語だという場合は問題に目を通す価値があります。


CASL II

アセンブラとして出題される「CASL II」は試験のために用意されている言語であり、実務で使用することはありません。

しかし、処理などが単純であるために取っ付き易く、理解しやすいというメリットがあります。

そのため、プログラムに関して事前知識が全くないという方はPythonなどを勉強するより合格の可能性を高めることができるでしょう。


表計算

表計算問題は「問題文が長い」という特徴があります。

そのため、問題を読むだけで余計に時間を費やしてしまう事態に陥ります。

ただし、長文を読んで理解さえすれば問題自体はさほど難しくありません。

Excel等の表計算ソフトの知識を持っている方、実務で頻繁に利用している方は点数を稼ぎやすい問題が出題されています。

問題をよく読み込めば解ける問題もあり、長文をいかにしっかりと理解できるかが勝負といった面も。

とはいえマクロに関する問題も出題されるため注意が必要です。


自分のスキルアピールにもなるのがプログラム言語問題

リンククラウド技術

基本情報技術者試験は、実務的な問題は少なく実際に「現場で役に立つ」試験ではありません。

あくまで「ITに関する基本知識を備えていることを証明する」資格です。

しかし、午後試験のプログラム言語問題に関しては、就活・転職・フリーランスで仕事を探す際のスキルアピールに繋がるかもしれません。

「基本情報技術者試験の午後試験で○○を選択して満点だった」などのアピールができます。

もちろん、基本情報に出題される問題自体さほどレベルが高いわけではありません。

それでもITに関する知識に加えて「言語に関する知識」までしっかりと証明できる試験だといえるでしょう。


基本情報技術者試験は知識の証明になる

計画を立てることがグループワークにおいて重要なことである

基本情報技術者試験を取得しておくことで得られるメリットは以下の通りです。

  • IT業界で働く上で必要な最低限の知識の証明
  • 午後試験はプログラミングスキル・知識の証明ができる
  • 業務連絡における話の理解がし易くなる(専門用語等)

実務では役に立たないと言われる基本情報技術者試験ですが、自分の知識などを証明するには十分な資格です。


フリーランスにとっての基本情報技術者試験

情報処理、ネットワーク


今回紹介してきた基本情報技術者試験ですが、フリーランスのエンジニアにとってはどのような存在なのでしょうか。

やはり、実際の業務上で役立つことは少ないかもしれません。

しかし、仕事を探す場合には「他の資格と併せて持っておく」ことで武器になり得ます。

ベンダー資格などで言語・技術への精通度合いや高いスキルを証明しつつ、基本情報で幅広いIT知識もしっかりと備えていることを証明できます。

持っておくだけで「エンジニアとしての箔」を付けることができる資格です。

また、午後の言語選択次第では所持している言語資格に加えて「複数言語を理解している」ということを証明できるでしょう。

決して「役立たず」な資格ではないのです。

基本情報技術者試験も、確実に「武器」になり得る資格だといえます。