IT業界の求人倍率の推移を徹底解説!IT業界の職種別求人倍率の実態と今後も予測。フリーランスエンジニア採用動向も確認
IT業界は今大きな人手不足の傾向があり、仕事をする側からすると売り手市場で有利とよくいわれます。
しかし、実際にどのような状況なのか詳しく知らない方も多いでしょう。
そこでここではIT業界全体やエンジニアといった職種での求人倍率について詳しく紹介します。
ここ5~6年の推移から巷でよくいわれる売り手市場ぶりが具体的にわかるでしょう。
個人で仕事を取るフリーランスのエンジニアにとっても追い風の状況ですが、必ずしも楽観できることばかりでもありません。
IT業界のこれまでとこれからについて、気になる人手の需要についても紹介していきます。
IT業界の求人倍率をデータで確認しよう
業界の求人倍率は転職情報サイト「doda」がわかりやすいレポートを公開しています(https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/data/)。
「IT/通信」という形で年度ごとの求人倍率が示されているので、是非参考にしてみましょう。
IT/通信業界の求人倍率の推移
IT業界は2014年以降もずっと求人倍率が高く、さらに増加の一途をたどっています。
dodaの表を見ると2014年4月では4.81だったのが、2019年の12月には8.84にまで膨らみました。
求人数の多さがよくわかりますが、そこから以下のような特徴が読み取れるでしょう。
- 一度も求人倍率が1を下回らない
- 一貫して求人倍率が高い
- 求人倍率は次第に高まる傾向にある
一度も求人倍率が1を下回らない
近年は必ずしも景気がいいとはいえません。
そのため求人倍率が1未満となり、1つの求人を複数人で争う状況も世の中全体では決して珍しくありません。
しかし先のデータの通り、IT/通信業界では一度もそのような状況になっていないということです。
最低でも1人に1つは求人が確保されている状況が続いています。
一貫して求人倍率が高い
倍率は高く、1人に1つどころか1人に対して複数の求人数が確保されている状態が続いています。
応募する企業を選べないという状況はあまりなく、エンジニアなどが複数の求人の中から希望に合うものを選べる状況がずっと続いています。
求人倍率は次第に高まる傾向にある
月日が経つごとに、求人倍率は増加し続けています。
2014年度の時点では4~5でしたが、それ以降のデータでは7~8という数値もよく見られます。
特に2019年はそれが顕著です。
エンジニアなど1人あたりが選べる求人数が、この6年近くで増えています。
IT/通信業界の求人倍率の前年同月比
前年同月比も全体的に高い数値となっており、以下のような特徴が読み取れます。
- 前年同月を超えている月が多い
- 2年連続の前年同月比100%超えもある
- 大幅な減少を記録した月は少ない
前年同月を超えている月が多い
昨年の同時期よりも求人倍率が高くなっているということは、それだけ求人数が求職者より増えていることを示します。
そのような状況にある月がとても多いということで、IT/通信業界では昨年の同時期よりも人手への需要が増加した月が多いことがわかります。
2年連続の前年同月比100%超えもある
2016年度と2019年度に関しては、その前の年度もまた100%超えが多く記録されています。
にもかかわらず前年同月比100%を超えた月がたくさんありました。
それだけエンジニアといった人手への需要が伸びており、供給が追い付いていなかった状況を示しています。
このような年度がこの5年間近くで2度もあったということで、これもまたIT/通信業界の需要の伸びを示すデータとなるでしょう。
大幅な減少を記録した月は少ない
実は前年同月比で100%を割った時期も多少あります。
特に2016年度の最後の3か月から2017年の1~10月までは前年までの需要の伸びが止まっていました。
人手不足がやや落ち着いていたのでしょう。
それ以外の時期に関してはあまり大きく数値が落ちていません。概ね80~90%台を維持しており、一定の求人倍率はあったことがわかります。
IT/通信業界の求人倍率の前月比
今度は前月比を見てみましょう。月ごとという短期間の推移がよくわかるデータです。
IT業界は人手不足が叫ばれがちですが、毎月のように求人倍率が前月を超え続けるという状況はさすがにありません。
月単位で見ると細かな増減を繰り返しており、下記のような特徴あります。
- 需要の高い月とやや低い月がある
- 一度落ちた求人倍率も一定のタイミングで戻っている
- 全月比が大幅に落ちる月はない
需要の高い月とやや低い月がある
おおよその傾向として、求人倍率が前月比で100%未満となりやすいのが1月、2月、5月、6月、10月。
100%以上になりやすいのが3月、4月、8月、9月、11月、12月です。
月ごとに需要の高まりには変化があるのがわかります。
全体的に求人倍率が高いですが、実際に求人を探す月によって選べる求人数が少し変わることを意味するデータです。
一度落ちた求人倍率も一定のタイミングで戻っている
月によっては求人倍率が落ちることも当然あります。
しかしその状態が長期化することはなく、またすぐに戻ってくる傾向にあるようです。
短期間のうちに一定の需要の高まりが常にあり、全体の推移としては需要が落ちないことがわかります。
前月比が大幅に落ちる月はない
前月比80%を切る月は2014年から2019年の間にはありませんでした。
需要が多少減るとはいっても限度があり、少ない月でもIT/通信業界には一定の需要があることがわかります。
IT/通信業界は人手への需要が高まっている
IT/通信業界の求人倍率は細かく見ると多少の増減の推移があるものの、全体的にその倍率は常に高いです。
しかもそれが年を追うごとに拡大しています。人手不足の業界だと巷でよくいわれるのも納得の状況でしょう。
企業の採用意欲はおおむね高い状況が続いています。
転職を目指すエンジニアなどはもちろんのこと、IT業界の技術系フリーランスにも恩恵の大きい状況です。
ただしこれまでのデータは業種単位のものであり、厳密にはエンジニアなどの職種単位ではありません。
職種別のデータを見ることで、エンジニアなどに限定した場合の実態がよくわかります。
6年度分のエンジニアなどの職種別求人倍率
2014年から2019年の、エンジニアにおける求人倍率は以下のような特徴があります。
- 求人倍率は高い数値が続いている
- 年を追うごとに求人倍率が高まる傾向がある
- 業種全体の数値よりもやや高い
求人倍率は高い数値が続いている
IT/通信業界全体のデータと同じく、常に高い数値がキープされています。
6年度で一度も求人倍率5を下回ることがありません。
これは1人のエンジニアに対して、常に5つ以上の求人数があったことがわかります。
年を追うごとに求人倍率が高まる傾向がある
2014~2015年度では5~7程度でしたが、2018~2019年度になると9~10程度の数値が目立ちます。
パッと見ただけでも、エンジニアなどの技術系の人間に対する求人数が求職者よりも増えていることがわかります。
業種全体の数値よりもやや高い
この数値は、はっきりいって業界全体の数値より抜きんでて高いです。
営業系は2、事務・アシスタント系は常に1を切っている状況にもかかわらず、IT/通信系は5以上をキープし続けています。
エンジニアなどに対する求人数が、それだけ増えている状況を示しているのでしょう。
エンジニア系職種の前年同月比と前月比の比較
先ほどと同じようにdodaのレポートの数値から前年同月比、前月比を見てみましょう。
近年のエンジニアの求人倍率の実態がよりよくわかります。
前年同月比のデータ
全体的に100%以上の月が目立ちます。以下のような特徴が読み取れるでしょう。
- 前年同月よりも求人倍率の多くなった月が多い
- 業界全体で需要が落ち着いた時期は需要の伸びも止まっている
2月分しか100%未満の月がない
2017年はやや需要が落ち着いていた時期でした。
そこではエンジニアなど職種別データでも、同じように需要が落ち着いています。
その時期を除くと、前年同月比100%を切ったのは2018年度の2月、2019年度の6月の2か月分しかありません。
全体的に前年同月よりも求人数が伸び、供給を大きく上回った時期が多く、エンジニアなどへの需要が高かったことがわかります。
前月比のデータ
全体的に需要の高さが目立つエンジニアなどの技術系の職種ですが、前月比で見るとIT/通信業界全体でのデータと似た傾向にあるようです。
- 需要の増えやすい月と減りやすい月がある
- 常に右肩上がりで求人倍率が増加し続けるわけではない
- 大幅に需要が減る月はない
- 一度減った需要も短期間で戻っている
常に前月を超える求人倍率となるわけではなく、短期間の推移を見ると細かい増減がかなりあります。
1人のエンジニアが1年間、いつでも同じ数の求人数を選べるわけではありません。
しかし大幅に需要が減る月もなく、一度減っても短期間ですぐに戻ります。
そのため、全体的には一定の求人数が確保されているようです。
エンジニアなど技術系職種への需要は特に高い
短期間では多少の増減はありつつも、業界全体と連動するように求人倍率は常に高いです。
場合によっては業界全体と比べても高い場合もありました。
エンジニアという職種では業界全体の需要の高まりに与れないということはありません。
むしろエンジニアは強く求められていることがわかります。
今後の需要予測
これまでは2019年までのデータでの傾向であり、これからどうなるのかを注視している人も多いでしょう。
元々十分に高い需要のあったエンジニアですが、今後ますます求められると予測されています。
その理由は、これまでのところでも需要が高かった理由と同じです。世の中の技術の発展によって、さらに需要が高まっています。
需要が高い理由は世の中の技術の発展
現在、かつてない高いテクノロジーが当たり前のように世の中に登場し、日常生活でもビジネスの現場でも活用されています。
IT技術はもちろんのこと、人工知能(AI)などこれから伸びていく新しい技術にも注目が集まっています。
これらを開発・商品化したり、ビジネスの現場に活かしたりするには、専門の技術を持ったIT系のエンジニアが欠かせません。
だからこそ企業はエンジニアといった職種への高い採用意欲を見せ、多くの求人を出しています。
必要なエンジニアを自社で確保できないと、顧客へのサービスにも影響が出るためです。
現在標準とされる技術による商品化やサービスを提供するためにこそ、企業からエンジニアといった職種が求められます。
今後の技術のますますの発展によりエンジニアへの需要も増えていく
2019年の時点でもITをはじめとしたかなり高度な技術がたくさん実用されていますが、技術の発展に終わりはありません。
現在も日進月歩で研究と開発、実用化が進められており、どんどん新しい技術が世の中で活用されています。
それにあわせてエンジニアが求められていきますから、これまで見てきたような高い需要は今後も続くでしょう。
むしろ今後はエンジニアが不足し、優秀な人材の奪い合いになるという予測もあります。
エンジニアとして働く人間からすると、有利な状況が今後も続く可能性が高いでしょう。
フリーランスのエンジニアにもチャンスが大きい
この状況はフリーランスのエンジニアにも追い風となる状況です。
1人のエンジニアに対して複数の求人数が集まるくらい、現在でも人材が不足気味。
それだけ企業の現場では技術者が求められています。
そしてエンジニア不足を解消する手段として、必ずしも社員の採用だけが用いられているわけではありません。
フリーランスのエンジニアを一時的に採用するという動きも出てきています。
エンジニア不足でフリーランスも仕事を得やすい
需要がなければフリーランスのエンジニアが仕事を取るのは難しくなります。
しかし多くの企業が求人を出し、求職者の数を大きく上回る状態が続いていますから、案件獲得には困りません。
普段からフリーランスを活用している企業はもちろん、普段はそのような対応をしていない企業も狙い目です。
フリーランスの方から営業をかければ仕事を取れる可能性が十分にあります。
転職を目指しているわけではないフリーのエンジニアにも、恩恵の大きい状況になるでしょう。
このような状況は、これからフリーランスのエンジニアを目指す方にとっても大きなチャンスです。
一方で、フリーランスのエンジニアになるにはさまざまな手続きや求められるスキルなどもあります。
以下の記事では、これからフリーランスエンジニアを目指す方向けの情報を紹介していますので、フリーランスに興味がある方はぜひ併せてご参照ください。
フリーランスITエンジニアになるには? フリーランスエンジニアになるための流れと、活躍するためのポイントを解説
必要な技術があることは大前提
当たり前の話ですが、フリーランスとして企業から採用されるには、今必要な技術を持っていることが大前提です。
基本的に即戦力として見られているため、通常の転職者以上に実力はシビアに見られます。
どれだけ企業からの需要が高い状況でも、必要な技術を持っていないフリーのエンジニアが採用される可能性は高くありません。
日進月歩で進む技術の発展についていく必要があるため、需要が高いといっても決して楽観はできないといえます。
エンジニア以外の能力も必要
また、フリーランスで仕事を取るにはコミュニケーション能力など、エンジニアとしての能力には一見関係ないものも必要です。
即戦力として活躍するには、今求められている仕事についての的確なヒアリングが必要になります。
実際に仕事を進めるにあたっては、付き合いの浅い現場の関係者たちとも協調して仕事を進めなければなりません。
高いコミュニケーション能力は必要になりがちです。
まとめ
IT業界は人手不足だと巷でいわれがちですが、それはデータからでも確認できました。
業界全体でもそうですが、特にエンジニア系の職種別で見るとその需要の高まりが非常によくわかります。
しかもますますその需要が高まることすら予想されますから、IT系のエンジニアにはかなり有利な状況が続くことになるでしょう。
フリーランスで働きたいエンジニアにも恩恵の大きい状況です。
しかし個人で仕事をしていくなら、必要なスキルやコミュニケーション力を磨くことも大事です。
そうすればより仕事を取りやすくなり、年収の増加や個人での活躍もしやすくなるでしょう。