はじめに
ゲーム開発システムであるゲームエンジンはゲーム開発におけるコストを抑えてプラットフォームにおける差異を軽減するために様々な支援をしてくれる開発環境のことを指します。
全世界に配信されている数多くのゲームすべてが同じゲームエンジンで作成されたというわけではありません。
ゲームエンジンは紹介しきれないほど膨大な種類があるのです。
今回はその中でも比較的新しく開発されたにLumberyardついて紹介していきます。
Lumberyardの特徴や使い方、よく比較されるUnityとの違いも確認していきましょう。
Lumberyardについて
Lumberyardとは
Lumberyardとは2016年2月9日に初リリースされたクオリティの高い3Dゲームを開発するためのゲームエンジンツールです。
Amazonが提供しておりCrytek社のCryEngineベースで作られたAAAゲームエンジンとなっています。
特徴としてはCryEngineにプラスしてTwitch(Amazonが提供しているライブストリーミング配信プラットフォームで自身でネット番組などを配信できるサービス)との連携機能、Gameliftが連携されておりパソコンやPlayStation4はもちろんXbox OneやiOSにも対応してPlayStation VRの発表もされました。
個人だけでなく大手のゲーム会社や独立しているゲーム開発会社でもツールセットを利用できるようになっています。
現在はベータ版のため発展途上のゲームエンジンともいわれています。
Lumberyardはどんなゲーム作成に向いているのか
Lumberyardは以下のようなゲーム作成に向いているといわれています。
- 一人称シューティング
- レースゲーム
- スポーツゲーム
- サバイバルゲーム
- サンドボックスゲーム
- 複数プレイヤーに対応しているオンライン・バトルフィールドアリーナゲーム
Lumberyardの料金
Lumberyardは無料で使用でき、かつライセンスやロイヤルティ、サブスクリプションは不要です。
利用に関してかかる費用は利用プランに対するAWS(Amazon Web Services)の標準料金のみとなっています。
Amazonに支払う金額が完全に0であるとはいえませんが他のどのクラウドを利用する際にも料金は発生するためAWSの標準料金のみとなっているLumberyardは比較的安く使用できるといえるでしょう。
Lumberyardのインストール
Lumberyardをインストールするには
Lumberyardをインストールするには以下の要件が必要となってきます。
Amazon.comアカウント
Amazonが提供しているツールのため第一条件としてAmazon.comのアカウントが必要となってきます。
ここで注意したいのはAmazon.co.jpのアカウントではなくAmazon.comのアカウントという点です。
アカウントを持っていない場合は事前に作成しておきましょう。
性能
インストールには以下の性能が必須です。
- OS:Windows7以上(64-bit)
- メモリ:8GB RAM以上
- グラボ:NVIDIA GeForce 660Ti、Radeon HD790以上
- CPU:Intel Quad-Core(I2300)、AMD Octo-Core(FX810)以上
容量:8GB以上(ディスク容量は8GB以上と記載がありますが、Zipを解凍すると40GB程になるので事前に容量に余裕を持たせておきましょう。)
ソフトウェアはVisual C++再頒布可能パッケージfor Visual Studio 2013、もしくはVisual Studio 2013[Community/Pro/Ultimate] with update 4が必要となります。
AWS(Amazon Web Services)のアカウントは必要?
Lumberyardを使用するにあたってAWSのアカウントは不要ですが、Lumberyardのダウンロード・利用にはAWSカスタマーアグリメントやLumberyardサービス条件への同意が必要となってきます。
またこの機会にAWSアカウントを作成する場合には、本人確認として電話番号とクレジットカードまたはデビットカードが必要です。
作成時は手元にクレジットカードもしくはデビットカードを用意しておきましょう。
ゲーム販売について
LumberyardはAmazonが提供しているサービスだからこそAmazonでゲーム販売をしなければいけないと思いがちですが、どこでも希望する場所でゲーム販売ができることも魅力の一つです。
Lumberyardを実際にインストールしてみる
以下のURLのページからLumberyardをダウンロードしていきます。
https://aws.amazon.com/jp/lumberyard/
10GB近くありますので必ずネットワーク環境で行ないましょう。
ダウンロードもインストールも時間がかかるため時間に余裕があるときに行なうのがおすすめです。
Amazon Lumberyardの日本語ページはダウンロードできるバージョンが最新ではない場合があるのでダウンロードする際は必ず英語ページからダウンロードしましょう。
ユーザーガイドなどで日本語化されている箇所が多くなっているので心配する必要はありません。
インストールが完了したら
ダウンロードしたZipファイルを解凍しファイル名を「Lumberyard」へ変更します。
ここで注意しておきたいのはファイル名にスペースが入ってしまうことです。
しっかり動作しない場合があるためスペースが入らない場所であればどこでも適しているといえます。
Lumberyardのサポート体制
Lumberyardはサポートやチュートリアルが充実しています。
公式サイトを見てみると起動の仕方や重要なツール、ヒントについて事細かに動画が掲載されているため実際に作成する前に動画をよく視聴してチュートリアルをしっかり行ない、作成中の疑問点はサポートへ問い合わせるのも一つの手段だといえるでしょう。
ソースコートもすべて公開されている
LumberyardのソースコードはGitHub上で全て公開されています。
何か問題が起きた時にエンジン側のコードなのかそれともゲーム側のコードなのか詳しく調べることが可能です。
またエンジン本体に拡張が必要な際はPullRequestを送ることもできます。
Twitchとの連携
Lumberyardの魅力の一つでメリットでもあるTwitchとの連携機能ですが、まずはTwitchのアカウントを取得していない方はアカウントを取得する必要があります。
以下のURLから取得の手続きをしましょう。
https://www.twitch.tv/
Twitchと連携するには
Twitch連携にはFlowGraphを使用します。
Lumberyadのパッケージ内に含まれているTwitchGamePlayのFlowGraphからエクスポートして自身のプロジェクトにインポートしてください。
Twitchと連携してできること
ゲーム視聴者が配信者とリアルタイムにコミュニケーションをするための「Twitch Chatplay」、配信者がチャット参加者をゲームへ招待する「Twitch Joinln」。
自身で簡単にできるネット配信サービスのこれらTwitchと連携することで対面でゲーム通信しているのと同じようにゲームを楽しむことができます。
離れた所に住んでいる顔を見たことがない相手とでも視聴者と配信者間で一体感が生まれ、新しい感覚を味わえるのもTwitchと連携する魅力といえるでしょう。
Twitchで配信するには
Twitchで配信するには別途配信ソフトが必要となってきます。
PS4の場合はプラットフォーム上からの配信が可能です。
Twitchとの連携は無料のためTwitch配信をして新たな感覚を体感してみてはいかがでしょうか。
視聴者に実際にゲームをプレイしてもらうことで自身のゲームをより多くの方に目をとめてもらう機会が増え、ゲームの売り上げにも期待ができます。
Unityとの比較
Unityとの違いは?
スマホゲームをダウンロードして実際に開いてみると最初のページに「Unity」の文字が出てくるのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
ここではUnityとLumberyardを比較して解説していきます。
Unityについて
Unityは2005年6月8日に初リリースされたユニティ・テクノロジーズ社が提供しているゲームエンジンです。
ゲームエンジンだけでなく開発環境や実行環境など「ゲーム開発プラットフォーム」が提供されています。
こちらは2Dゲームや3Dゲームを開発する上で便利であると有名です。
スマホゲームの「白猫プロジェクト」や「ドラゴンクエストVIII空と海と大地と呪われし姫君」、全世界で大爆発ヒットを起こした「ポケモンGO」に使用されたことで名を広く知られるようになりました。
料金の比較
無料で使用できてかかる料金は利用プランに対するAWS(Amazon Web Services)の標準料金のみとなっているLumberyardと比べ、Unityは無料版と有料版であるPro版(75ドル/月 ※日本円でおよそ8300円~8500円)の2種類があります。
AWSには初回12カ月無料の特典もあるため試しに1年間も使用できるメリットがあり、無料のキャンペーン適用終了後でも標準的なプランであれば平均3800円ほどで使用可能です。
これはUnityの有料版よりかなり安く、またハイクオリティなゲーム開発ができるともいえるでしょう。
連携機能の比較
Unityと比べてLumberyardはTwitchやAWSとの連携機能があります。
Twitchに関しては先述した通り、連携は無料です。
ニコニコ生配信のように自身で簡単に配信ができるため、1人でゲームするより複数人でゲームが楽しめるというのが魅力でもあります。
AWSに関しては各サービスに精通していなくても問題のない仕組みとなっています。
プレイヤーアカウントやリーダーボード、音声再生などはすでに実装されているので近い将来、視聴者へ話しかけると答えてくれるような機能にも期待できるかもしれません。
Lumberyardのメリット
Lumberyardは堅牢なプロフェッショナルツールによって美しい世界やリアルなキャラクター、思わず息をのむエフェクトのゲーム構築ができます。
またLumberyardにはゲーム内での日照変化や天候変化の機能が備え付けられているためRPGなどのゲームの場合、日夜の変化や天候の変化があるとより一層リアルにゲームが楽しめるでしょう。
ゲームを作るデザイナーから日照変化機能が欲しいと要望が出た際に最初から備え付けられた機能で対応できるのもLumberyardとUnityとの違いです。
またLumberyardはHDRディスプレイ対応であり、ゲームの世界が美しくリアルなため実際にそのゲームの中にいるような気分になれるでしょう。
これをVRで実践すると非常に素晴らしい感覚が味わえそうです。
今後普及する4K・8K化にも期待がもてます。
統括
Lumberyardは現時点では発展途上のゲームエンジンといわれています。
しかし比較的安く使用できてAWSやTwitchとの連携機能だけでなく日照変化機能がついているなど、他のゲームエンジンにはない魅力も大いに盛り込まれているのです。
実績のある大手会社はAmazonと連携していることから動作実績も多いため信頼性も高いといえるでしょう。
使い勝手や操作感についても非常に高評価を得ています。
ダウンロードから少し難しい印象をもっている方も少なくないかもしれんませんが、ゲームと同じでミッションクリアをしていくつもりで進めていくとゲーム完成までの工程も楽しめるかもしれません。
Lumberyardはこれからの実績にかなりの期待ができるゲームエンジンといえるでしょう。
今現在、他のゲームエンジンで作成中の方やまたゲーム作成を始めてみたいという方もぜひLumberyardを使用してみてください。
Lumberyardならではの魅力が新しい感覚を呼び覚ましてくれるかもしれません。