メーカー系SEの定義


ハードウェアを製造していた企業から独立したSIerで働いているSEのこと

メーカー系SEとはハードウェアメーカーの情報部門が企業として独立したSIerで働いているSEを指します。

その経緯から元となったメーカーの業務を請け負うことも少なくありません。

情報や情報に関わるインフラをメインの事業としている企業が母体だったこともあり、そのメーカーのハードウェアに強いSEが多いのも特徴です。

母体だった企業のハードウェアを使っている企業に行き、ハードに適したシステム構築を行うといった働き方も選択肢として存在します。


他の分野のSIerで働いていてもメーカー系SEとなる事例も

リンククラウド技術


ユーザー系や独立系で働いていた場合でもSIer自体が吸収されることで本人の意志とは関係なくメーカー系SEとなることもあり得ます。

これまでは社内SEとして働いていたにも関わらず客先での作業を指示されるという大きな労働環境の変化もないとはいい切れません。

メーカー系は元となった企業が情報系に強いというメリットもあります。

その一方で企業が開発したシステムやソフトウェアなどの運用や客先に応じたシステムの開発などが求められるため個人のスキルも問われるポジションです。


メーカー系SEの平均年収


どの企業でも年収600万前後と比較的高め

メーカー系SEは元の会社が大きい傾向があるためSIerの中でも高めの年収を得ることができます

平均年収は600万前後ですが、20代、30代とキャリアを積んでいくにつれて大きく収入が増えていくことも珍しくありません。

特に30代は技術面でも管理面でも十分なスキルを有している人材が多いので1,000万円近い収入を得る人もいます。

管理職のポジションも現実的に見えてくる年代です。

プロジェクトや企業の中核に携わる機会も徐々に増え、キャリアアップも新たな局面を迎える時期となります。


安定した収入を得られる

収入


ハードウェアメーカーのシステム部門が独立したSIerは別の企業になったとはいえ元の会社の影響を受けやすい傾向があります。

裏を返せば親会社から継続的に案件をもらいやすい環境でもあるため一定の収入は見込めるでしょう。

他にも親会社のハードを使っている企業からの依頼も引き受けることができるので安定した働き方が可能です。

それだけではなくプロジェクトの重要な部分を任された場合にはより挑戦的に働くこともできる環境といえます。


メーカー系SEの主な仕事内容・働き方

プログラミングコンセプト


系統に関係なく、SEの仕事内容は大きく4種類に分類されます。

  • 戦略立案、構成企画
  • 要件定義、必要要素定義
  • 設計、開発
  • 運用、保守

特に上の2つは「上流工程」と呼ばれシステム開発で何が求められているのか、何が必要なのかを明確にする業務です。

下2つは実際にプログラミングや検証を行う実践的な業務がメインとなるフェイズとなっています。

上流・下流というのはウォーターフォールモデルでの呼び方であり、優劣を示すものではありません。

あくまでシステム開発の段階でどこに携わっているのかを表す例えです。

ここではメーカー系SEが以上のような仕事をどのような形で行っているのかを詳しく解説していきます。


親会社からのシステム開発依頼

親会社が新しい製品やサービスの展開をプランニングした際にシステム開発全般を依頼されることがあります。

この場合の仕事はSIerとしての業務を担当する場合が一般的です。

また親会社経由ということもありシステムの大枠を描く役割の戦略や構成、要件定義などの上流工程から下流工程まで一貫して携わることも夢ではありません。

最初から最後まで自らが関われるという経験はなかなかできないことです。

親会社からの要請のためハードウェアや様々な条件で縛りも少なくはないですが、大きなプロジェクトを動かす楽しさが味わえます。


他の企業からの業務委託



メーカー系は親会社との繋がりが強いイメージもありますが、外部企業からの業務委託も重要な仕事です。

特に親会社のハードウェアをメインに使っている企業が相手であれば、必要なシステムをハードウェアの形式に合わせて構築することが求められます。

社内SEがいない場合や情報部門がそこまで強くない場合には使用ハードウェアメーカーの関連企業であるSIerに声がかかるでしょう。

勤務形態としては客先に一定期間常駐するのがメインですが社内勤務や在宅での勤務なども可能な案件もあります。

他の企業の案件を順調にこなしていけばこの先も業務を発注してもらえる可能性が高まるので長期的に見て安定した収入に繋がる仕事といえるでしょう。


メーカー系のSIerの案件で磨かれるスキル


多様な案件に携わることで他業界の知識を得られる

親会社が提供するサービスの利用企業は特定の業界に偏っているだけではありません。

客先で作業を行う際、必然的に客先の社員と関わる機会があるはずです。

その中でIT業界とは異なる業界の知識や専門用語、概念などに触れることもできます。

ITという枠に囚われず多くの業界について学べるのはメーカー系SEの醍醐味です。


より実践的なシステム開発技術

アジャイルソフトウェア開発のコンセプト


自社や親会社からの直接的案件ではなく、外部企業から委託を受けた場合にはその企業が欲しているシステムをその場にいる人間で開発する必要があります。

プログラミング自体は他の案件でもできますが特定の企業の特定の業務に特化したシステム作りは客先での作業ならではでしょう。

自らが考え知識を得て、それをシステムとして構築する。

その一連の流れを何度も経験することでより実践的なシステム開発技術を得ることができます。


客先で折衝を行うためのコミュニケーション能力



異なる業界の企業で仕事をすることは異文化交流に近いものがあります。

IT業界では一般的でも他業界では異色に見えるかもしれません。

それは逆説的に他業界の文化もIT業界では異色に見えることも意味します。

文化が違うから、理解できないからと争っていては業務以前の問題です。

作業の大変さや予算などで摩擦が起きてしまうときもあるでしょう。

その摩擦をいかに減らし、円滑に業務を進められるような環境を作るか。

相手の意思を汲み取りながら自分の主張も上手く伝えるアサーション的コミュニケーションスキルも働く上で次第に身についていくでしょう。


各業種別の違い


製造業系は上流工程に携われる可能性が高い

製造に関わるシステムエンジニアは「このサービスを創るためにどうすればいいか」などのアイデア出しやそれを実現するための試行錯誤に携われる可能性が大いにあります。

元々メーカー系SIerはハードウェア製造から分離したものです。

外部に委託するよりも繋がりのあるSIerに任せる方がリスクやコストを低く抑えることができます。

また業務に携わったSEは知識やノウハウ、技術を蓄積していくため今後の活躍も見込めるといえるでしょう。

どちらかといえば企業内部寄りのSEだからこそ上流工程から仕事を任せられるという一面もあります。

一つの案件に対し一貫して仕事を行えるのは最大の魅力です。


機械・電気系は組込み型システムや電子機器に関わる業務が多い

知性的なビジネス分析


機械や電気に関わる企業での業務はその製品を制御するために組み込まれたシステムの開発や正常に作用するかどうかの検証などを行います。

特に自動車など乗り物については命に直結する仕事となるので責任も大きいものとなるでしょう。

よりユーザーに近い視点でシステム構築が行えるため、やりがいや達成感も得られます。

昨今は自動運転機能を普及させようという動きも活性化し、将来性も十分に見込める業界といえそうです。


ユーザー系・独立系と比較した際のメーカー系のメリット


情報系の企業が母体であったため案件に困らない

パソコン画面を示して同僚と話す男性


情報系の企業が親会社である関係でその企業のサービス開発などの案件が定期的に受注できるのがメーカー系の最大のメリットです。

ユーザー系や独立系は受注できる案件の種類や新たなシステム開発に挑戦できる機会などがメーカー系と比べ少ない傾向があります。

その点、メーカー系は親会社の強いバックアップがあるため新しい取り組みも行いやすい土壌が整っているといえるでしょう。

親会社のハードウェアが普及しているというのも大きなポイントです。

ハードウェアは業界をまたいで利用されています。

つまり業界に分け隔てなく案件があるということです。


親会社が開発したハードウェアを利用している企業からの案件にも対応可能

前述した通り業界に囚われずハードウェアが利用されているため対応できる業界の範囲が幅広いのも他にはないメリットといえます。

例えばユーザー系だと親会社の業務範囲内での案件が多く、どうしても知識が偏りがちです。

独立系は幅広い業務に対応できるという点ではメーカー系と共通していますが、親会社がないためそのハードのプロフェッショナルであるメーカー系SEに太刀打ちできない場面も出てきます。

親会社そのものだけではなく親会社のサービスを利用している企業の案件に参入できるのは収入面でも安心できる要素にもなり得るでしょう。


客先での業務も多いため知識を学ぶ機会が多い



親会社のハードを使っている企業の案件に対応する際、客先にある程度常駐することも起こりえます。

そしてその客先である企業が何をメインの事業としているかで必要なシステムも変わってきます。

そうなると必要となるのは客先企業の業務領域における専門知識です。

もちろん汎用性のあるシステムを求められることもあるものの、業界の知識を全く知らないのではやりとりやコミュニケーションに差し障る可能性もあります。

その業界に関わるシステムを構築するのであれば尚更です。

客先を回れば回るほど必要となる知識は増えていきます。

新しく知識を身につけるのは大変ではありますがその都度学んでいけば先々の仕事で必ず役に立つでしょう。


IT業界全体の流れ


下流工程の人材不足

上流工程に必要な人材はそこまで多くありません。

戦略・構成を考える作業は関わる人数が増えれば増えるほどまとめることが難しくなり、かえって業務に支障をきたすおそれがあるためです。

そして実際開発をしたり、検証をしたりという段階ではより多くの人材が必要となります。

多数のチームを作って、それぞれがシステム構築・正常に動作するかの検証を行ったほうが効率的なのは明らかです。

しかしその開発以降の下流工程段階での人手不足が懸念されています。

プログラミングやシステム開発を行える人材が圧倒的に足りていないのです。

ある程度は外注で補ってはいますがそれにも限界があります。

下流工程の人材不足は現在の課題であり将来的な課題でもあるのです。

しかし開発や運用が得意な方にとっては大きなチャンスと呼べる時期でもあります。


SIer同士の合併や吸収が予想される

ロウソク足チャート


IT業界といっても様々な領域がありますがSIerに関していえば大手から小規模のスタートアップまで企業が乱立している状況です。

その中で収入源を確保して一定以上の案件を受注できるようにするのは中小企業ではなかなか難しいでしょう。

また大手も自社の技術のみならず他にない技術を求めて他社を買収するのを視野に入れていることも十分に考えられます。

外部に委託するよりも自社の中で完結させた方が低コストにできることが理由です。

そうなるとSIer自体の絶対数が減り、今あるSIerの多くが何らかの形で消えることが予測されます。

現代は多くのシステムに支えられていますが無論全ての仕事が平等に振り分けられているわけではありません。

より最適な体制を創るためにSIerはふるいにかけられることになるでしょう。


システムエンジニアはフリーランスになっても強い



以上のことから企業に縛られずともフリーランスエンジニアとして活躍ができる見込みは高いといえます。

今後考えられるSIerの再編やIT業界を取り巻く不安定な雇用状態を鑑みるとたとえ企業に雇用されていたとしても安心できるとはいえません。

多少リスクや面倒な作業は増えてしまいますがフリーランスの方がフットワークが軽く垣根を超えて事業に携われるため、企業との共倒れを避けることができます。

システムエンジニアは自分自身のスキルや資格がものをいう職です。

そしてシステム構築は今後も社会を成り立たせる上で必要となる技術でもあります。

フリーランスになったとしても積極的に仕事を取りにいけば生活に困ることはないでしょう。


自己研鑽を欠かさないSEが勝利する



情報業界は大きな変化をしやすい業界です。

だからこそ貪欲に新しい知識や技術を求める人材の需要がこれから更に高まります。

そしてその知識や技術はIT系のみに止まりません。

マーケティングの資格があればエンジニアの技術を生かしてより多くの人々に利用してもらえるサービスの提供が可能になります。

ファイナンシャルプランナーの資格を保有している場合は金融のシステム開発にも携われるでしょう。

スキルアップをすることでより仕事の幅を広げることが可能となるのです。

特にフリーランスは様々なスキルを備えることで活躍の幅も広がり、多くの企業やプロジェクトで必要とされます。


まとめ

ドアに入るビジネスマン


SIerとしての成り立ちから多くの案件に携わり、案件によっては上流工程の経験も積むことができる。

その業務の多様さと幅広さがメーカー系SEの最大の魅力であり強みでもあります。

できる仕事が多い分求められるスキルも非常に高くなりますが、その環境下で自分を磨けるのは何物にも替えがたい大切な経験です。

いくつも厳しい案件をこなすことで技術が向上し、依頼先の企業が求めている以上の最適なシステムを作り上げることも不可能ではありません。

単なる技術職ではなくゼネラリストを目指すこともできるでしょう。

これを機に改めて自らのキャリアを見つめ直してみてはいかがでしょうか。