はじめに

オンプレミスとは自社で情報システムの設備を持ち、自社で運用することを指します。

「社内運用」ともよばれ、その企業の建物内にサーバーを保有してそこに自社の業務システムを載せる例が一般的です。

オンプレミスは「On-Premises」の訳でpremiseとは「(商業用の)建物、施設」の意味があります。

企業の建物の中にその企業の使うシステムが置いてある(=on)とイメージすればわかりやすいでしょう。

以前はオンプレミスが企業で一般的とされてきましたが最近は自社にサーバーを置かずに「クラウド」サービスを使う新しい流れも生まれてるのです。

そこでオンプレミスはクラウドとどう違うのか、それぞれのメリット・デメリットも解説してきます。


クラウドとオンプレミスの違いとは


クラウドとはインターネットにつながっていれば使えるシステムのことです。

Googleが運営するG-Suiteではインターネットにつながってさえいればアカウントを作るだけでメールサービスのGmailやOfficeソフトのワード、エクセル、パワーポイントに相当するGoogleドキュメント、Googleスプレッドシート 、Googleスライドなどをすぐに使うことができます。

またクラウドプラットフォームとしてはAmazonドットコムが運営するAWSやMicrosoftが運営するMicrosoft Azure(アズール)なども有名です。

オンプレミスが自作CDだとしたらクラウドはSpotifyやApple Musicなどのストリーミングサービスだと考えればイメージがしやすいかもしれません。


オンプレミスとクラウドのメリット・デメリット


自社で業務システムやサーバーを保有し運営するオンプレミスと外部サーバーやソフトウェアを使用するクラウドはそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

ここでそれぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。


オンプレミスのメリット

まずオンプレミスのメリット・デメリットからみていきましょう。

オンプレミスのメリットとしては以下の4点が挙げられます。


初期費用を見積もりやすい

オンプレミスでは最初にサーバーやシステム構築の費用がわかるのでシステム導入にどのくらいの予算が必要なのかが比較的明確であるといえるでしょう。

そのため予算配分や投資計画などが立てやすくなります。


速度が早い

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オンプレミスは基本的に情報システムと利用者をLANで繋ぐためクラウドに比べて速度が早いのも特徴です。

クラウドの場合はインターネット回線の速さや提供されているソフトウェアの容量によって起動時やデータの保存時に時間がかかることがありますが、オンプレミスならばそうしたストレスから解放されることになります。


アクセスを限定できる

社内に独自サーバーを置いて誰がそのデータにアクセスできるかを自社で選ぶことができるオンプレミスでは外部からの侵入を受けにくく、情報漏洩のリスクを減らせるというメリットがあります。

機密情報などを扱っている企業やサイバーセキュリティのリスクを減らしたい企業向きといえるでしょう。


カスタマイズしやすい

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オンプレミスには自社の業務形態や作業工程にあわせていちからシステム設計をすることができるため、その企業のニーズにあったシステムを作りやすいのも特徴です。

特殊な作業や特有の就業形態などがある場合にはクラウドを使うよりもオンプレミスの方が長期的にみてストレスフリーに業務を行うことができます。


オンプレミスのデメリット

オンプレミスには高い柔軟性と安全性が備わっていますがその一方でいくつかのデメリットも存在します。

オンプレミスのデメリットは大きく分けると以下の4点です。


初期費用がかかる


オンプレミスでは自社でサーバーやシステムを用意する必要があるため、クラウドに比べて初期費用が高額になる傾向がみられます。

またハードウェアに加えその設置やセットアップなどの作業費用もかかるので平均数百万円、規模が大きければ数千万円から数億円かかることも珍しくありません。


導入に時間がかかる

オンプレミスはハードウェアの購入や設置、システム設計などを自社で行う(または外部に依頼する)必要があるため必要になったらすぐに導入、というわけにはいきません。

一般的には構想から設置まで数ヶ月以上の期間が必要になることから計画的な導入が必要になります。


問題が生じた場合には自社で対応する必要がある

自社サーバー上のシステムを使用しているオンプレミスは何か問題が生じた場合、自社または外部のシステムエンジニアを呼んで対応してもらわなければなりません。

またサーバーなどのハードウェアが故障した場合には復旧するまでそのシステムが使えなくなることも考慮に入れておきましょう。


運用コストがかかる

システムによっては24時間体制でシステムのチェックが必要になる場合には十分な知識と経験を持った常駐のエンジニアを複数名雇わなければなりません。

こうしたメンテナンスをシステム会社に依頼することもできますが保守サービス費用もかかってしまうのです。


クラウドのメリット


それではクラウドにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

クラウドのメリットには以下のようなものがあります。


すぐ利用できる

インターネットにつないでアカウントを作ればすぐに利用が可能なため使いたいと思った時、即座に利用を開始することができます。

自社でシステムを構築する必要もないので初期導入の手間を省くこともできます。


初期費用が安い

オンプレミスでは多額の初期費用が必要になりますが、クラウドでは月額使用料を支払うだけなので比較的安価に利用を開始することができます。

サービスによっては最初の一ヶ月は無料などのキャンペーンを行っているケースもあるのでお試しとして気軽に利用することも可能です。

初期費用が必要な場合でもハードウェアに対する投資コストはなく、設定費用やクラウド構築費用のみですむため初期費用は数万円から数十万円程度に抑えることができるでしょう。


運用・保守の手間が省ける

クラウド自体の運営・管理はクラウド事業者が担うため自社で行う必要はありません。

またハードウェアに不具合が生じた場合でもクラウド事業者が復旧作業を行っていくので自社で問題を解決する手間も省けます。


クラウドのデメリット

このように一見メリットが多いように見えるクラウドですが、実は以下のような問題点も存在します。


長期的にみるとコストがかかる

クラウドサービスは月額で課金される仕組みになっているので長期的に見るとオンプレミスよりコストがかかる可能性もあります。

利用人数・ストレージの容量・オプション機能の有無によって値段が大きく異なる点も注意が必要です。


カスタマイズの自由度が限定的


一部のソフトウェアでは簡単なカスタマイズが可能になっているものの、デフォルトのデザインや操作性はそのサービスを提供している企業の管理下にあります。

そのため業務形態や作業工程によっては自社に合わなかったり特定のニーズには答えられなかったりするケースも存在することを覚えておきましょう。


セキュリティー

インフラエンジニア


セキュリティー面がクラウドの一番の懸念点ともいえるでしょう。

クラウドサービスでは外部のサーバーを使用するため、部外者からのサイバー攻撃を受けて情報が漏洩するリスクが常に伴います。

利用者が十分にサービスに精通していない場合には重要なファイルを誤って関係者以外に公開・共有してしまうなど、人為的なミスに伴うリスクもあるのです。

クラウドでは常にインターネットにつながっているということを意識した上でサービスを利用することが必要不可欠になります。


サービスの継続性

自社でシステムを持たず外部サービスを利用することのもう一つのデメリットはそのサービスの継続性です。

クラウド事業者の業績が悪化した場合には急にサービスが中止になることもありえます。

別の企業に買収されることによってシステムの操作方法や使い勝手が大幅に変更になる場合もみられるのです。

大切なデータが突然使えなくなるいうことにならないよう自社でもバックアップをとっておくなどの対策が必要になります。


オンプレミスとクラウドの導入動向


今までクラウドといえばGmailやDropbox、Evernoteなど、BtoC(消費者向け)のサービスがメインでした。

それが近年ではAmazon Web ServiceやGoogle Cloud Platform、Microsoft AzureなどのようにBtoB(企業向け)のサービスが充実しつつあります。

サービスによっては個人向けとビジネス向けに価格や機能のセレクションを変えて、利用プランを提供しているところもあるためより様々なニーズに答えられるようになっているのです。

すぐに使えて初期費用がかからない、というのはクラウドのメリットでもありますがその一方で実際のシステムの使い勝手という点ではまだまだオンプレミスの方が優れています。

そのため近年ではプロジェクトの規模や期間に併せてオンプレミスとクラウドを使い分けるという形態がより一般的になってきているようです。


オンプレミスとクラウド、どう選べばいい?

オンプレミスもクラウドもそれぞれメリット・デメリットが存在しました。

その中で賢いシステム運用を行うためには以下の点に注意してオンプレミスとクラウドの使い分けを行うことが重要となります。


使用期間

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クラウドは基本的に月額または年額で料金が加算されていきます。

そのため長期的に使用する場合は、オンプレミスの方がコストを抑えられる可能性もある点がひとつの選択の基準になるでしょう。


使用規模

クラウドは使用する人数やストレージの容量などによって利用料金が変化します。

小規模のプロジェクトや少人数の企業で業務を行う場合にはオンプレミスよりクラウドを使う方が利便性が高いのです。


利用場所や雇用形態

仕事上のチーム


オンプレミスではオフィスなどのサーバー設置場所での利用がメインとなります。

外部(支社、営業所など)からシステムにアクセスすることもできますがその場合には専用のソフトウェアやVPN回線の設置が必要です。

その一方、クラウドではインターネットがあればどこからでもシステムにアクセスすることができます。

外出先や自宅からの作業が可能になるので、場所にしばられない働き方ができるようになるのです。

外部へのアウトソーシングや在宅ワークなどの就業形態が一般的なケースや支店や営業所が多く存在するような企業ではクラウドの方が利便性が高くなります。


データの重要性


先述した通りインターネットにつながっているという点でクラウドは常にセキュリティリスクと隣り合わせであるといえます。

利用者が十分に知識を持っていない場合にはパスワード管理が徹底されていなかったり、関係者以外に誤ってデータをシェアしてしまったりするなど人為的なミスによるデータ漏洩の危険性もあるため注意が必要です。

オンプレミスでは基本的にLAN回線でつながっている利用者のみにアクセスが限定されています。

重要なデータを扱う場合にはクラウドよりもオンプレミスが有利であるといえるでしょう。


総括

革新的なコンピューター インターネット技術の時間


自社でハードウェアやソフトウェアを保有して運営するオンプレミスと、利用料を支払いながらインターネット上でクラウド事業者の設備やサービスを利用するクラウドにはそれぞれにメリット・デメリットが存在しました。

オンプレミスには高い柔軟性や安全性というメリットがある一方で、初期費用の大きさやメンテナンスの手間といったデメリットがあります。

またクラウドはすぐに利用を開始できて比較的安価で始められるという点は優れていますが、カスタマイズ性の高さや安全性、また長期運用ではコストがかかるなどまだまだ問題点があるのが現状です。

現在BtoBのクラウドサービスの充実に伴い、プロジェクトや企業規模に応じてオンプレミスとクラウドを使い分けるという手法が主流になっています。

両者のどちらを使った方がいいか迷った場合には使用期間や使用規模、利用場所や雇用形態、そしてデータの重要性などを基準に選ぶといいでしょう。

それぞれのメリット・デメリットを理解した上で賢くオンプレミスとクラウドを使い分けていきましょう。